連続ドラマ「三代目明智小五郎」のレギュラー放送も無事に終了しました。出演・作り手としてもほっと一息です。作ったからには一人でも多くの人に見てもらいたいのですが、深夜ドラマで放送地域も限られていました(関東、大阪、香川、山陽、長崎)、なので本当に多くのみなさんに見ていただけるのは8月4日発売のDVD BOXからではないかと思っています。高密度で作った30分×10話、ぜひ一家に一枚、永久保存版で!
まず、今回のドラマを作るに当たって、18年の役者生活の中で、初めてスタッフとしてドラマ作りに少しだけ参加させていただきました。関わった部分は主にギャグのアイディア出しと構成です。撮影の間、日々、夜中までスタッフ、脚本家さんとアイディアを練っていました。目指すところは、誰もが疲れている深夜に、笑ってくつろげて、明日もがんばろうと思えるドラマ。可愛くて痛くなくてほのぼの出来る作品。
僕は子供のころからずっとギャグを追い求めてきたので、自分の好きなギャグで、パターン的に恥ずかしくないもので、狭すぎず広すぎず、健康的で誰も攻撃せずに大人も子供も楽しめる笑いを目指しました。特に最近は実写で子供が笑って楽しめるドラマが少ないので、深夜ドラマですが、再放送やDVDなど長い目で考えて、子供も楽しめるもの、ワクワクして内容も理解できて害のないもの、でも子供だましにならずに、大人も、特にお笑い好きの人も楽しめるものを目指しました。近いイメージは昔放送していたウゴウゴルーガです。ジャンルは違いますが、大人も子供も恥ずかしくなく楽しめるもの。あくまで狭いところに入り込まないで、みんなが理解できる笑い、でも見たことのない、10年後にも耐えられるクオリティと新しいパターンの創作を心がけました。コントとドラマの中間で、あくまでドラマ寄りになるように。
自分たちが考える面白いであろう事を、面白がって作らずに、あくまで真摯に冷静にストーリーとギャグを積み上げる。ニュートラルにお客さんが受け取れるように、それぞれが楽しんで解釈できるように、そしてこの世界を受け入れて、好きになってもらえるように、でも媚びずに、自分たちの信じた通りに。ドラマ上の嘘を極力減らして、死んだ人間が生き返るという大虚構の設定なので、それ以外の部分の感情や行動はリアルに。ボケられる所は最大限以上にボケて、でも核と品がぼやけないように、感情と行動をリアルに、見ている人がこの作りを信頼できるように。
で、見ている人が突っ込めるように。ツッコミは作り手とお客さんの大切なコミュニケーションなので、その部分を大切にしました。例えば、自転車を使いたいと思ってスタッフに自転車を用意してもらいじっくり眺める、ツッコミ所をさがす。普通の自転車はツッコミ所がないので、これがどうだったら残念か、自転車としてどこまでボケられるのかが勝負。まずは補助輪を付ける、「なんで補助輪っ!」とツッコミポイントが生まれる。その時点でもう普通の自転車ではなく「中五郎の自転車」になる。大人になっても自転車が乗れない、近所の人はどう見ているのか、でも乗らなくてはならない、幼少のころはどうだったのか、色々な想像が膨らむ。ウィンカーも付ける、ハンドルも高ーいカマキリ型、背もたれ、で、バイクみたいなマフラーを付けるかどうか迷ったけど、やめました。過多になりすぎるとボケが主な目的になってしまい、方向がぼやけてしまうので、バランスを大切にしました。20面相のマントも何か足りないなあと思ってずーっと見ていて、この人は謎めいた人だけど、どこか知ってもらいたい、でも謎でいたいという複雑な感情を持っているんじゃないかと思い、背中に20という文字を入れると面白いなあと思いました。それによってテレビを見ている誰もが20面相と分かって、それなのに中五郎は気付いていないで、そして本人は謎のつもりでいて、でもちょっと自己主張があって、という幾層かのボケと性格作りができるなあと思いました。
そんなこんなの10本があって、最終的には、このドラマらしい、新しい場所に着地できたのではないかと思っています。新しい課題も見えてきましたが、全般を通してほぼ自分のやりたいことが出来ました。2日で30分ドラマ1本を撮影(通常の1時間ドラマは5〜6日で1本、さらにこのドラマは通常のドラマよりスタッフの数が3分の1でした。)なのでハードな日々でしたが、後から「ああすれば良かった」と思う部分は1カットもなく、全力疾走でしたが、周囲の景色もちゃんと見て楽しみながら走りきった感じです。素の自分に近い感じで作ることが出来たので、中五郎のキャラも演じていて楽しかったです。これからDVD発売もありますし、各地域で再放送などがありましたら、末長く楽しんでいただければ嬉しいです!
三代目明智小五郎DVD BOX@Amazon